精密加工技術コラム
2022年09月29日
超精密加工を実現するために知っておくべき加工技術
超精密加工と精密加工の違いとは?
半導体業界や光学機器業界は製品の小型化・高性能化に伴い、構成される部品や金型にも高精度化や微細化が求められています。特にその加工領域は超精密加工と呼ばれており、当社の超精密加工の定義ではゼロ狙い及び±1μmの精度を達成することができる加工方法です。これは一般的な精密加工の±5μmと比較すると一目瞭然の精度差となります。この超精密加工技術を実現するためには、温度変化の少ない恒温室環境、高精度な工具と工作機械、そして加工設備を取り扱う技術者のスキルが重要です。
その加工技術を示す精度は使用する加工方法によって大きく変わってきます。そこで今回は装置部品 精密加工.COMを運営する(株)キンコーの超精密加工技術についてご紹介します。
求められる幾何公差を実現するための当社の加工技術
①面粗度
面粗度は加工したワークの表面状態を表す指標です。異なる設備で加工した場合はもちろんのこと、同じ設備で加工した場合でも、荒取りや仕上げ加工によってワークの表面の状態は異なります。そのため設計者は加工設備や加工方法ごとの期待できる面粗度を理解し、図面作成を行い、加工を担当する技術者は製作するワークに求める機能や精度に応じて最適な加工方法を選ぶ必要があります。例えば高精度な加工面を要求された場合は鏡面仕上げを行いますが、一方で精度が求められていない場合に鏡面仕上げを行うとコストアップになってしまうために、設計者は最適な面粗度の選定が重要となります。
一般的な切削加工の加工精度ではRa0.4、ワイヤーカット加工ではRa0.1です。しかし当社では平面研削加工、ワイヤーカット加工、ラップ研磨、粒体研磨でRa0.03の面粗度が実現出来ます。
長年培ってきた高い加工技術ノウハウと高精度加工を実現する設備を保有していることが重重要となります。一例として、平面研削加工ではワークに合わせた砥石選定と加工機ごとの送り速度・切り込み量の調整するといった独自ノウハウを強みにしています。
②平面度・平行度
平面度は表面の平坦度を表しており、反りやねじれのバラつきの大きさを示す指標となります。一方の平行度は直線や平面が基準面に対してどのくらい平行かを表しており、厚みのバラつき示す指標となります。プレートのような平面度・平行度が求められる部品では、精度にばらつきがある場合には、面に対して加わる負荷が違うために、このような部品を組み込む装置や機械自体の寿命や精度に影響が出ます。特に薄物かつ大型、細長い製品等は平面度・平行度がバラつく可能性が往々にしてあるために、適切な加工条件の設定が必要となります。
一般的な切削加工の加工精度は±0.01~0.02mmに対して、当社では超精密平面研削加工の加工精度は±0.002mmを実現出来、ゼロ狙いにも対応可能です。
材質にもよりますが、例えば超硬、SUS・ダイス鋼等の焼き入れ材に対しては、平面度・平行度は±0.002mmで、他社では断られやすいアルミに対してはサイズにもよりますが±0.01mm以下で対応可能です。平面度・平行度において加工技術は重要ですが、測定技術も非常に重要です。一定の室温で加工や測定を行わないと熱膨張の影響で寸法とともに平行度が変化してしまい、おおよそ1℃あたり0.001mmで変わります。お客様との測定環境と測定装置に違いがあることを考慮した上で、正確な加工精度で納品するために、当社ではまずお客様に測定検査をしていただき、その結果に基づいて0.数μm単位で補正してお客様の要求精度で納品をしています。
③真円度
真円度は回転物や摺動部品において特に重要な指標であり、いわゆる真ん丸さを表します。特に軸を中心に高速回転する回転物において真円度が充分でない場合には、製品としての機能を十分に発揮することが出来ないことがあります。真円度が出ない理由の多くは加工プログラムの設定や使用する工具と切削条件が合っていないことが挙げられるために、事細かに一つ一つ洗い出して確認することが大切です。
一般的な切削加工による真円度の精度は±0.01~0.02mmでありますが、当社で加工可能な真円度の限界加工精度は±0.002mmです。この加工精度を実現するために、当社では円筒研削加工、プロファイル研削加工、センターレス円筒研削加工で対応しています。当社の円筒研削加工の強みは保有するプロファイル研削盤に円筒装置が搭載されていることです。ワークの形状を拡大して投影機に映し出し、同倍率で加工線が描かれたチャート紙に倣って加工形状を仕上げることで、超精密な円筒研削加工に対応することが可能です。
④直角度
直角度とはその名の通り、対象となる面や線が直角であるかどうかを表す指標です。直角度と平面度と平行度は形状公差であり、図面とわずかに異なる公差であったとしても、想定よりも崩れた形状となってしまうために、非常に高い精度が求められます。
一般的な切削加工による直角度の精度は±0.01mmですが、当社では成形研削加工、プロファイル研削加工、ワイヤーカット加工により、±0.002mmを実現することが可能です。中でも、加工方法の一つである成形研削加工における当社の強みは、砥石の摩耗を抑える加工ノウハウを保有していることであり、寸法誤差を極限まで抑えられるので精度向上に大きく貢献しています。さらに保有する成形研削盤にCCDカメラを搭載しているので、加工ワークを機械から取り外すことなく測定し、補正加工を行うことにより微細・微小なワークに対しても誤差なく高精度に加工することが可能です。
超精密加工のことなら当社にお任せください
超精密加工を実現するためには、ただ精度よく加工が出来る設備を保有しているだけでは成しえません。当社のように各加工方法に対する知見とそれを活かした技術提案力が非常に重要であり、これと設備・環境が両立することにより超精密加工は実現することが出来ます。お客様の過剰品質の設計防止や精度向上のためのVA/VE提案をあらゆる角度から対応することができる当社だからこそ、最適な精度設計をお客様に提案することができます。ぜひお困りの案件がございましたら、当社にご相談ください。
最新の技術コラム
-
2024年12月04日
転写ピンとは
転写ピンとは 転写ピンとは、ピンの形状を樹脂や接着剤に転写するために用いられる部品です。プラスチック成形や金型の製造工程において、成形品に特定の模様や形状を付与す…
続きはこちら
-
2024年10月28日
シェアツールとは?
シェアツールとは? シェアツールは、接着した製品が横からの力、つまりせん断力にどの程度耐えられるかを試験するための装置です。このツールは、接着強度を評価する上で非…
続きはこちら
-
2024年09月21日
当社の手掛ける段付きピンの製作事例をご紹介!
段付きピンとは 段付きピンは、主に金型や機械加工に使用されるピンの一種で、ピンの直径が異なる部分が複数段階に分かれているのが特徴です。 これにより、段付きに…
続きはこちら
-
2024年05月03日
円筒研削加工とは?
円筒研削加工とは? 円筒研削加工は、円筒状の品物を回転させながら、砥石の外周で研削する加工方法です。被削材を研削砥石と同じ方向に回転させることで、旋盤と同様の回転…
続きはこちら